推敲による改作1
「ここに捨ててはダメ!」というタイトルの作品は5枚という制約で書いたものです。
起 季節は秋で場所は空き地。板べいに囲まれた狭い空間がポイントです。会社員の高田くんが引っ越し前後に、最後のゴミ袋を捨てようとした時に「ここに捨ててはダメ」と書かれた貼り紙に舌打ちをします。
心ない人たちがゴミを捨てているうちに、いつのまのかその空間がゴミ捨て場に。本来のゴミ捨て場に行くのがおっくうなので高田くんもそこにゴミを捨てていたのです。
承1 高田くんは、たまったゴミ袋を抱えて近くのゴミ置き場を探します。(最後ぐらいはその場所をキレイにしようと思ったから)
空き地には、空き缶やコンビニの弁当箱が散乱し、悪臭がただよっていました。
承2 裏通りを探しても集積所は見つかりません。仕方がないので、本来のゴミ置き場まで往復することにしました。
承3 この町に来てから良いことはありません。花屋の娘さんへの恋も実りませんでした。娘さんが結婚したことを知ったからです。
高田くんは身も心もボロボロになります。
承4 どこからか犬の遠吠えが聴こえ、町から追い出されるような思いで空を見上げます。けれど、星一つ見あたらないのは涙で視界がぼやけていたからでした。
ここまでが起・承のエピソードですが、高田くんの「身も心もボロボロ」が少し弱いと感じました。そこで、前半の惨めさを際立たせるために
1 「雨が降り続いたことで、たまったゴミ袋がドロだらけになっていた」と追加
2 「高田くんがつんのめってゴミ袋の上にころび、服がドロだらけになった」と追加
3 「花屋の娘さんは病で亡くなっていた」と変えてみました。こうすることで後半が生きると考えたからです。
転 半年後、うららかな春。高田くんが空き地をたずねてみると、その変わりように驚きます。整理されて空き缶も弁当箱もありません。板べいの囲みをのぞくと目を見はります。貼り紙はなく、一面にシロツメクサが咲いていたのです。春の日差しが白い花にふりそそいでいます。
「白詰草。別名はクローバーで、原産地はヨーロッパなんですよ……」
いつか、花屋の娘さんが優しく声をかけてくれた日々がよみがえりました。
「こんな日陰でも、精一杯に生きているんだね」と、高田くんはつぶやきます。
結 「そうなの、ここは、あたしたちの場所なのよ……」と、花たちのささやきが聴こえてきました。
それは、高田くんには亡き娘さんの声に聴こえたかもしれません。
浜尾


制作|事務局 正倉 一文