008. 親切

角田幸一の部屋

親切

 私は要介護で外出に車椅子を利用している。バスには、後方の降り口からスロープ板を出してもらい、運転手さんに介助されて乗車する。
 ある朝、病院に向かうためバス停で待っていたときのこと。通勤通学時間帯で車内は大混雑。運転手さんが降りてきて「次のバスでお願いできますか」。時間帯をずらせばよかったと悔やんだ。
 すると、降り口付近にいた女子高生が「私たち、降りて走ろうよ」と言って、4人が降り、場所を空けてくれた。
 みなさん大きなスポーツバッグとバレーボールを持っていた。「ありがとうございます」とお礼を言うと、「いいえ、これからバレー部の試合なの。だから少し走ってウォーミングアップ」。バスが出るときお辞儀をすると、みんなが手を振ってくれた。
 お昼過ぎ、病院での用事を終えてバス停で待っていると、通りに朝の女子高生たちの姿が見えた。軽く手を振ると、「おじさーん、試合勝ったよう」。やさしく行動力のある彼女たちに拍手を送りたい。


角田幸一

あけくれ 2026.4.9 角田幸一さん 65歳 東京都台東区 親切 東京新聞 朝刊 7頁 家庭面