第37回 イメージトレーニング

浜尾まさひろ 童話教室
画像はイラストACより

第37回 浜尾まさひろ 童話教室


イメージトレーニング

童話を酷評された私が、その悔しさをバネに上達したい一心で受講したのが「立原えりか童話塾」の通信講座でした。届けられたのは200字詰原稿用紙とテキストが3冊。私にとってテキストは「虎の巻」そのものでした。それは妖術を会得するための秘伝書のようなもので、私は胸をワクワクさせながら読みふけったものでした。
立原先生はおっしゃっています。
「祖父が精神の病にかかっていましたが、アンデルセンは、心の奥底に魔法の杖を持っていました。彼は、この世の悲しさに打ちひしがれたり、淋しさに耐えられなくなったとき、その魔法の杖を振ることで、周囲をおだやかな光であふれさせ、名もない花さえ気高く香り立たせることができました。彼にとって、身の回りのすべてが、メルヘンやファンタジーの種でした」
テキスト冒頭は初歩のレッスンで、発想を広げるためのイメージトレーニングでした。「赤」という言葉から連想する名詞を、原稿用紙に10分間でできるだけ書いてみる、というものです。
レッスン5では、自分が「魔女」になったと仮定します。そんな自分を、小学校のお友だちに、600字以内の文章で紹介する、というものでした。
テキストが2冊目ともなると、レベルは高くなってきました。課題を10枚にまとめて送り、スタッフからの添削を待ちます。
落語三題噺らくごさんだいばなしに「竜」「リボン」「女の子」を入れて物語にまとめる課題もありました。
一番印象に残った課題は、テレビを見たことも触ったこともない人にテレビを説明する、というものでした。
「あなたが相手にしている人は、レイゾウコもガスも電気も知らない人です」(原文)という補足付きです。これには頭を悩ませましたが、何とかクリアーし合格点をもらいました。
思いついたアイデアは、僻地へきちから修学旅行に来た中学生の視点でした。東京の宿で初めて見るテレビに驚き、その「魔法の箱」の描写を、絵日記風に書かせてみました。1人称の文章にリアリティを感じさせるため、お国訛りも使いました。方言も活かすことができるわけです。
さあ、ここで同じようなレッスンにとりくんでもらいましょう。スマホを見たことも触れたこともない人にスマホを説明して下さい。相手は子どもでもかまいません。ただし、あなたが相手にしているのは、基本的なことは何も知らない人です。自由な発想で600字から800字で書いてみて下さい。

浜尾

ハンス・クリスチャン・アンデルセン - Wikipedia

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