第39回 浜尾まさひろ 童話教室

浜尾まさひろ 童話教室
映画『二十四の瞳』から

映画で読みとく児童文学

原作が未読であっても、1本の映画を観ればおおよその内容がわかります。映像は文字よりも強烈なインパクトがありますので、その映画に心が洗われれば、それは生涯記憶に残るはずです。児童小説を原作とした映画は戦前から製作されていますが、私は名作といわれるそのほとんどを映画で知りました。
「風の中の子供」坪田譲治原作、昭和12年公開、清水宏監督。小学5年の善太と1年の三平が田舎で夏休みを過ごしていると、2人にさまざまな出来事がふりかかります。終盤にはサーカス団の子どもとのふれあいも描かれています。
「風の又三郎」宮沢賢治原作、昭和14年公開、島耕二監督。風のマントの特殊撮影に時代を感じさせますが、あどけない子役たちの演技と工夫された脚本が原作の雰囲気をかもし出している良作でした。
「二十四の瞳」壷井栄つぼいさかえ原作、昭和28年公開、木下恵介監督。知る人ぞ知る日本映画史に残る最高傑作です。瀬戸内海に浮かぶ小豆島しょうどしまの小学校での、女性教師と12人の児童たちとの、20年間におよぶ交流が戦争を交えて描かれています。桜並木の下で大石先生と子どもたちが遊ぶ光景は、白黒映像だからこその美しさです。(映画は、文部省特選となる)
山椒大夫さんしょうだゆう厨子王説話ずしおうせつわ、昭和29年公開、溝口健二監督。平安時代末期、越後を旅する親子が人買いに騙されて引き離されます。奴隷のような日々を送った厨子王ずしおうは心が荒れ、妹の安寿あんじゅは母との再会を願います(小説では弟と姉)。映像美と芸術性は、日本映画の至宝です。ちなみに少年時代の厨子王は津川雅彦さんが演じていました。(映画は、ヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞を獲得)
「ノンちゃん雲にのる」石井桃子原作、昭和30年公開、倉田文人監督。木登り中に枝が折れ、ノンちゃんが池に落ちる冒頭から始まります。ほのぼのしたファンタジー児童映画の傑作。天才子役で元祖美少女ノンちゃん役の鰐淵晴子わにぶちはるこさんが「別れの曲」をバイオリンで奏でるラストは必見です。(映画は、文部大臣賞に輝く)
「キューポラのある街」早船ちよ原作、昭和37年公開、浦山桐郎監督。川口市の鋳物工場が舞台で、貧しいながらも力強く生きる少年少女を描いています。キューポラというのは、鉄を溶かす小型の炉のことです。当時の時代背景や社会問題を織り交ぜた青春群像劇。吉永小百合さんの出世作でもあります。(吉永小百合は、ブルーリボン賞を受賞)
私は古い映画を観ることで魂が清められてもいます。映像にはその時代の子どもたちが活き活きと躍動しているからです。リメイクでもこれらの映画のクオリティーを超えることはできないと私は思っています。
浜尾

制作|事務局 正倉 一文