小学生が書いた童話
「生まれながらの天才」という言い方がありますが、子どもの才能は、幼少期にどんな環境で育ったかで決定されると私は考えています。
幼児は2歳からでも物語を読みとることが可能です。大人の読み聞かせがなくても、自ら絵本を読み、ストーリーを把握することができます。
幼児は思考力を刺激する遊び感覚によって絵があってもなくても、空想で補えるからです。これは天才ということよりも子ども本来に備わっている能力でもあります。
小学生になると、自分でストーリーを組み立てて物語を作ることができます。子どもの想像力は大人には思いつかない着想があることを思えば、不思議ではありません。
『童話の花束』(1993年版)に掲載された児童の部に「お月さまのお店屋さん」というタイトルのファンタジーがあります。
設定は、だれもいない小島にぽつんとお店があるというものです。
でもこのお店は夜にしかひらきませんでした。さいしょにきたのは、ねずみさんで「ねこのぬいぐるみをください」といいました。「ぼく、ねことあそびたいんだ。でも、かあさんがだめだというから」といって、さっさとお店をでていきました。
(原文のまま)
つぎにきたのがきつね。しっぽによく似たえりまきを買いにきたのです。
「けんかしてとられたんです」
といいました。
うさぎさんは5匹の子に、ニンジンケーキを買いにきました。
青虫はいつもはキャベツを買うのに、今日は「黄色い羽をください」といいます。
つぎに来たのはアライグマのおばさんです。クリーニング屋さんなので石けんを買いにきたのです。
「あわがいっぱい、たつ、石けんをください」
その理由は明日、ぞうの上着を洗うからでした。
最後にやって来た客は、なんと、宇宙人の子です。
「なにがほしいの?」
ときくと、
「ぼく、お友だちがほしい」
すると、店の人が
「いいよ、ぼくがなってあげよう」
もうすぐ夜が明けます。
「たいへんだ!」
店の人はあわてて店をしめました。
お月さまのお店屋さんと、宇宙人のぼうやは手をつないで、空をのぼっていきました。
作者は芳野真央さん。年齢は明記されていないのですが、小学生らしい豊かな発想で書かれています。
宇宙人のぼうやは、ともだちがいない淋しい子どもの気持ちを代表していて、その心を温かく包む結びが微笑ましいラストになっています。
このお店は万物の象徴をイメージできるので、すべての生き物のためにあるのでしょう。
作者が今も童話を書き続けていますように。
浜尾

制作|随筆春秋事務局

