
近藤健の故郷、アポイ岳が見守る様似の海(北海道日高地方)。様似町を拠点に活動するカメラ女子、加藤みゆきさんが撮影
近藤 健 『増穂の小貝』 随筆春秋刊
こんけんどうエッセイ集 第5集
2024年9月24日より発売中!
ユーモアと人生の機微が織りなす近藤健ワールドへようこそ!
近藤 健は、40歳を機にエッセイの執筆を始めた。東京で28年の会社員生活を送った後、北海道に戻り、ユーモア溢れる作品を世に送り出している。エッセイスト斎藤信也や直木賞作家佐藤愛子に師事し磨き抜かれた文章は、人生の辛酸をもユーモアで包み込む温かさを感じさせる。生まれは、様似町(北海道日高地方)。
赤穂義士の介錯人が祖先に!?近藤健のもう一つの顔
近藤 健の母方の先祖には、赤穂義士の切腹に際し、介錯(介添えの武士が後ろから刀で首を落とすこと)を務めた人物がいる。その名は、米良市右衛門。そんなこともあり、近藤の作品には忠臣蔵を題材にした作品も少なくない。歴史愛好家にもぜひご一読いただきたい。
遊び心満載のリバーシブル仕様!パートナーEmmyによる心温まる装画・挿絵
作品集のカバーはリバーシブル仕様。時々の気分に合わせて楽しめる。装画と挿絵は近藤 健のパートナーEmmyによるものである。カバー裏面は、近藤の原点である生まれ故郷・様似町のフォトグラフとなっている。撮影は、その様似町を拠点に活動するフォトグラファー加藤みゆきさん。
全13集刊行予定!近藤健ワールド、乞うご期待!
2021年11月に始まった作品集は、今回で第5集。ユーモアと人生の機微が織りなす近藤健ワールド、乞うご期待!

心揺さぶる物語たち – 18編から厳選した4つのあらすじ
白装束に身を固めた義士の後方に、緊張の面持ちで介錯人が控えている。すでに太刀は抜かれ、切腹人の挙措に神経を研ぎ澄ましている。義士が検使に一礼し、静かに瞑目する。介錯人の刀がゆっくりと上段に到達した。義士が目を見開き、三方の切腹刀に手を伸ばした次の瞬間……。
「もうひとつの『介錯人の末裔』」
夜中に『ミーン、ミーン』と鳴いているヤカラがいる。窓を開けると、青森出身の社員が電信柱にしがみついている。『おい、落ちるなよ』と声をかけると、鳴き声が『ツクツクボーシ、ツクツクボーシ』に変わった。彼は、酔うと決まって電信柱に登った。なぜ、東京電力に就職しなかったか、と思うほど電信柱が好きな男だった。
「川崎高津寮」
ブドウのような大きな尻を持ち、足の長さまで入れると五、六センチになる。全身にこげ茶色の毛が生え……(略)そんなオニグモの巣作りを眺めながら、この不気味な連中の標本を作ったら凄いことになるぞ。
「自由研究の成果」
出発の時刻はまたたく間にやってきた。(略)貝殻のお土産と、バスの中で食べなさい、とひと包みの握り飯を手渡された。私は下げた頭を上げることができなかった。作家福永武彦から贈られた歌「夜もすがら春のしるべの風吹けど増穂の小貝くだけずにあれ」は、女将の心の支えとなってきた。
「増穂の小貝」

制作:正倉 一文
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