僕の人生で初めての彼女ができたのは、高校2年も終わりの頃だった。
春が来て3年生になったら、もう今のように彼女の隣りに座っていることはできないだろう。富士高では毎年クラス替えが行われていた。焦っていた。
なんとかしなければ。
そこで思いついたのが、手紙作戦。お菓子屋で購入したロッテのチューインガムを一旦開封し、中のガムを1枚抜き、空いたスペースに小さな紙片の手紙を挿入しておく。これならきっと上手くいくだろう。
「君に惚れた」
下手な文字でこれだけ書いた。翌日、登校して、1時間目が始まる前に、そのチューインガムを隣りの彼女に渡した。彼女も、こちらの目論見に薄々感づいているような素振りだった。さらにその翌日、また登校して、着席すると、彼女がこちらを振り向いて、こっくり頷いた。目出度くカップルの誕生となった。
それからの僕は毎日が有頂天だった。世界にこれほどかわいい存在はないだろうと、浮足立った僕の頭の中は、一足早く、すっかり春になっていた。
その彼女との結末は以前にも書いたとおりである。
(中略)
30歳以降、僕は徐々に孤立していった。親戚との関係も例外ではない。両親はそれなりに連絡を取っていたようだが。気がついてみると、従兄妹たちは皆結婚して所帯を持っていた。従兄妹の配偶者やその間に出来た子供ら、つまり従兄妹姪、従兄妹甥らは皆、優秀である。結局、僕の身内には現在、学者が2人とドクターが5人もいる。
・筑波大医卒 北関東で総合病院の副院長を務める。循環器。50代
・群馬大医卒 群馬大学病院勤務。救命救急。30代
・群馬大医卒 群馬大学病院勤務。病理学。30代
・金沢大医卒 都内病院勤務。循環器。30代
・杏林大学医在学 そろそろ卒業か。20代
・東邦大薬学卒 薬剤師として働いていると思う。30代
・関大・早大理工博 室蘭工大金属材料工学教授。数年前60代で物故
・お茶女・群大工博 国学院女子短期大学繊維材料工学教授。50代
(以上2024年12月現在)
彼らとはまったく疎遠であったが、最近は、中元・歳暮のやりとりぐらいは行うようになっている。今時の成績優秀な子は、こんな世相を反映してか、多くの収入を望めるドクターを目指す子が多い。僕らの時代には東大‐中央省庁・一流企業というエリートコースが存在した。それにしても、僕の身内には医療従事者が多く、むかしの彼女にも、医療関係者が多かった。どういう巡り合わせなのだろうか!?


