小学生目線の難しさ4
『よっちゃんは親友だろ』
「もういいんだ。勝手にひっこせばいいよ」
『いつから、そんな薄情になったんだ?』※
「なにを! 約束をやぶったのはよっちゃんじゃないか、意地をとおすのも勇気がいるんだぞ」
『ハハハ、勇気じゃないよ、そんなものは。おまえはよっちゃんから逃げてるだけなんだ』
「……」
『勇気があるってことは、ほんとうの男らしさは、やさしいってことだよ……』
(※注、少し理屈っぽくなりましたので整理します)
「勝手にひっこせばいいよ」
『そういうこと、いうかなあ』
「約束をやぶったのは、よっちゃんじゃないか、意地をとおすのも勇気がいるんだぞ」
『そうかな? それじゃ、あのとき、どうして恐竜のフィギュアを買ったんだい?』
「……」
トモキは、何もいいかえせなかった。
ふいに、風がトモキの頬に吹きつけた。
『さよならって、いってこい』
影の子が、ささやくようにトモキに話しかける。トモキは、ランドセルをもって立ちあがった。
< 転 >
1か月後、トモキに手紙が届いた。
よっちゃんからだ。封を切り、ゆっくりと手紙をひらいた。
「トモキくん、元気ですか、ぼくは元気です
このあいだは家に来てくれてありがとう、うれしかったよ あまり話ができなかったから、こうして手紙を書いています
父さんから、この町とも、おわかれをしなければならないといわれたとき、ぼくは泣いてしまいました かなしくて、かなしくて、なみだがポロポロおちていったよ
トモキくんとはなれて、大阪にいくのがいやだったから。話をきいたあと、ぼくは博物館へは行けなかった。ごめんね、トモキ。
大阪に行っても、ぼくはしばらく学校へ行けなかったんだ。空をながめているとね、トモキくんとあそんだ日のことが、絵になって浮かんできたよ、そう、ふたりでサイフをひろったことや交番におじいさんをつれていったこと、西の広場でかげおくりをしたこともあの町での思い出はけっして忘れないよ
恐竜図鑑はトモキくんが持っていてね、こんど大阪にもあそびに来て下さい 芳雄」
< 結 >
読み終えたトモキは、しずかに胸をなでおろした。そして、つくえの引き出しから、よっちゃんの分まで買っておいた小さなステゴザウルスのフィギュアを、ギュッとにぎりしめた。
「影の子」おわり
浜尾

制作|事務局 正倉 一文

