010. 守れ!!「お母さんの卵焼き」

角田幸一の部屋

守れ!!「お母さんの卵焼き」


 スーパーに買い物に行ったら、10個入りの鶏卵がワンパックで300円もして驚いた。昭和の頃、卵はあまり値上がりしない「物価の優等生」だった。
 東京の下町で定食屋を長年営んできた私は、いくつもの卵焼きを作ってきた。「お母さんの卵焼き」は、誰もが愛する庶民の味だ。主役ではないが、弁当に入っていないと悲しくなる。
 妻と娘が手伝ってくれた店は、私が病気を患った上にコロナ禍もあって廃業した。私の味は店の
厨房ちゅうぼうから娘の台所に引き継がれ、母親の愛情というスパイスを足して、私の孫たちのお弁当を彩っている。孫たちの笑顔が目に浮かぶ。
 物価高もあり、お弁当には冷凍食材を多く使うようになったと娘から聞いた。鳥インフルエンザや肥料の高騰などで、鶏卵の生産や流通を担う人たちも大変だと思うが、安定的に手ごろな価格で提供され、お母さんの卵焼きの味が守り続けられるようにしてほしい。


元調理師 角田幸一(65)

2026年6月10日 産経新聞掲載