あひる&ゆきなリレーエッセイ集

まきばの朝 草を食べる羊たち 高千穂牧場


 

ミヤマキリシマ 花だより (その7)

 

 

「今年のわが家の秋分の日」(by あひる)

 

その日は幸奈が仕事だったので、主人の運転する車で、ひよことまめを連れて高千穂牧場へ行った。

途中のラーメン屋で早めの昼食を取った。

頼んだのはラーメン三つと餃子を十個、ラーメン好きのひよこはおとな一人分のラーメンをペロリと完食し、まめはといえば餃子六個も平らげた。

車で三〇分ほどかかる高千穂牧場の駐車場は、かなり混んでいた。ようやく車を下りて坂道を登り、まずは羊とのふれあいを楽しんだ。去年ひよことまめを連れてきたときは、リュックサックのおやつを狙われたまめが悲鳴を上げて逃げ回り、羊よりも周囲の注目を浴びていた。

しかし今年は餌を手のひらに乗せ、余裕を見せている。

さらに坂道を登ると売店があり、ソフトクリームコーナーは店の外にまで行列ができていた。あきらめて外に出ると、なんと特設のソフトクリームコーナーがあるではないか!! しかも三組しか並んでいなかった。

ラッキー!と大声をあげてひよこが走り出した。

店の向かい側の土手に座り、コーンに載ったチョコレート味のソフトクリームを豪快に頬張るひよこ。

紙カップにバニラ味を入れてもらい、口にクリームがつくたびにティッシュで拭き、ゆっくりとスプーンで食べるまめ。ふたりの対象的な姿は面白い。

食べ終わったと同時に次へと走り出すひよこを、必死になって追いかけるまめを見て、去年と違う成長ぶりにまた感動した。

三分ほど走った先に、乗馬体験の特設会場ができていた。

主人がひよこに乗馬をすすめると、彼女はピョンピョン飛びはねながら、喜んで受付けに並んだ。慎重派のまめはわたしと手をつなぎ、ひよこの様子をじっと見ていた。わたしはまめの目線にしゃがみ、たぶん嫌だと言うだろうと思いながら、まめはどうするかと訊ねた。

「やってみようかな」 と意外な答えが帰ってきた。

三歳以上は体験できるということなので、まめはひよこに手を引かれて順番を待った。それぞれにカウボーイハットをかぶせてもらい、飼育係が馬をゆっくりと引いて会場を一周する。ひよこはやたらと手を振り、まめは慎重に手綱を握っていた。

帰りの車の中では、ふたりともぐっすり眠っていた。

幸奈と広輝と、福岡に住むわたしの妹にラインで写真を送った。そういえばわたしが中学生の頃、家族で宮崎の子供の国に行ったことがある。妹はそこでラクダに乗った。あのときのことを思い出したとメッセージを送ると、妹からこんな返信があった。

「あのとき姉ちゃんは、『あんたの乗ったラクダはでっかいウンチしたよ』と言ったんだよね」

そんなことを言ったなんて全く覚えていなかった。

わたしは中学校の制服を着ていたせいで、ラクダに乗ることができなかった。

「制服姿で乗るなんて、ありえないよ」

と母に厳しく叱られて、泣く泣くあきらめざるを得なかったのだ。そのことはしっかりと覚えている。

「あのときわたしだって乗りたかったんだよー」

とラインすると、

「へー、そうだったんだー」と返ってきた。

体の弱かった両親だったが、そんな思い出もあったなーと今は懐かしい。今年九月に妹にも初孫が生まれ、お互いおばあちゃんと呼ばれる立場になったが、心の中はあの頃とたいして変わらないような気がしている。

 


 

 


 

「ひよことまめ、対照的なふたり」(by ゆきな)

 

娘のひよこは好奇心旺盛おうせいで活発な性格だ。それに対し息子のまめは慎重派で人前ではおとなしい。まめの性格は、わたしにそっくりだ。

わたしは小さい頃から慎重派で人前ではおとなしかった。母曰く、「石橋を叩き割っても渡らない」性格なのだ。

物心ついたころから、人前では話すことが苦手で、小学生の頃は気づいたら一日も話すことなく家に帰ってきたこともあるぐらいだった。ところが家に帰ると家族には色々な事を話し、おしゃべりが止まらない。人前ではおとなしいが、家ではよく喋る子だった。

息子のまめも、人前ではおとなしく、家ではよく喋る。保育園から帰宅すると、保育園での一日の出来事を細かく教えてくれる。わたしは幼稚園や学校での生活は苦手だった、あまり楽しい思い出はないのだが、まめは保育園での出来事を、とても楽しそうに話す。団体生活に馴染めないのではないかと心配していたが、先週行われた運動会では、一ヶ月前から始まった念入りな自主練習のおかげか、本番では張り切ってお遊戯をするまめの姿があった。

その姿を見ていると、団体生活が苦手で運動会は大の苦手だったわたしには『そこは似ていなくて良かった』と少しホッとするのであった。

娘のひよこの好奇心旺盛で活発な姿をみていると、羨ましく感じる。

わたしには三歳下の弟・広輝がいるが、なぜか、ひよこは広輝の性格に似ている。広輝は現在、東京に住んでいてミュージシャンをしている。昔から好奇心旺盛で活発な性格だった。学生時代も積極的に生徒会の役員などをしていた。そんな広輝の積極的な性格を、わたしは羨ましいと思うこともあった。

わたしは現在、パソコン関係の仕事をしている。人前では話すことが苦手なわたしには、パソコンと向き合う仕事があっていたようだ。

そして随筆春秋で文章を修行している。自分の気持ちを伝えることの苦手なわたしにとって、文章で心の中を表現することが、それを解決できる唯一の方法である。

さて正反対の性格をもつ子どもたちふたり。これからどんな風に成長ぶりをみせてくれるのか、楽しみである。

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