ミヤマキリシマ 花だより (その11)
「本を聞く」(by あひる)
新聞の文字がかなり読みづらくなり、市販の拡大鏡ではまにあわなくなった。わたしは現在、視覚障害四級である。
高校時代から本を読みすぎると頭が痛くなっていた。
勉強嫌いの言い訳のように思われることもあったが、大学病院に検査入院しても、はっきりとした原因はわからなかった。眼鏡やコンタクトレンズでも合うものがなくて一番見えた頃で矯正した視力で〇、七だった。現在は矯正して〇、一と視野の障害がある。
それでも日常生活にはあまり不自由を感じていなかったのだが、文章を書くときの参考の資料が読みにくくなってきたことには少し焦りを感じていた。
今年主人の母と実母の一年忌を終え、自分のこれからの事をじっくり考える余裕ができた。
そこで一年前から受けているロービジョンケアの担当の方からの紹介で録音図書のCDを借り、本を聞くことになった。毎月送られてくる情報センターだよりのリストから聞きたい本を選び、連絡するとCDが送られてくる。自分で四苦八苦しながら読んでいたときに比べ、なんと楽しいことだろう。一筋の光がさしてきた。
希望の本をお願いできると言うことだったので随筆春秋第五十五号をお願いしてCDにしていただいた。わたしが聞き終わり返却をするとほかの方にも貸出ができる。
今はこれを聞きながら楽しい時間を過ごしている。
欲深いわたしは、さらにパソコンの四百字詰め原稿用紙を自力で読める方法はないかと相談したところ、拡大読書鏡を紹介していただいた。パソコンの画面を拡大読書器のカメラで写し、二十二インチ画面に文字が大きなサイズで現れる。
感激だった。楽しみがまた増えた。
拡大読書器のカメラに孫たちの変顔を写して大笑いした。
気がつけば季節は最高気温三十五度にまでなっていた。
梅干しの土曜干しに最適なお天気である。
叔母の形見の直径一メートルの平たいザルに、六キロの梅干しをひよこが丁寧に並べてくれた。ひよこの夏休み最初のお手伝いである。毎年自由研究に意欲的なひよこも、もう小学三年生である。今年は隼人の歴史を調べに隼人塚史跡館につれて行こう。
主人の車でまめもつれて。
(注)隼人とは、古代日本において、現在の鹿児島県に在住したとされる人々のこと。
「夏休み」(by ゆきな)
少し前の日曜日に、ひよことまめを海に連れて行った。
まめはおじいちゃんと念入りに準備体操をし、浮き輪をはめて海に入っていった。最初は怖がっていたがすぐに慣れた。いっぽうバタ脚でスイスイと泳いでいるひよこは、砂浜の感触が苦手なようで、海に入るまでに時間がかかり、せっかく海に入ったと
思えば、すぐに上がってきて、貝殻集めに夢中になっていた。
二人をみていると、姉弟でも対照的で面白い。
まめはさすがに男の子だなと思うほど無鉄砲で、遠くに見えたフラミンゴの浮き輪をみて、
「あひるさんのところにいく」
と、フラミンゴを目指して泳ごうとしていた。
「あっちは、深いから危ないよ!」
と声をかけ安全なほうに戻した。
ひよこは、足に砂が付くたびに洗いにいこうとする。
わたしが、
「最後に洗えばいいよ!」
と声をかけても納得せず、砂がつくたびに水道で足を洗いに行く。
しばらく遊んでいるとあたりが暗くなり雨が降ってきた。
近くにいた人が、竜巻がくるかもしれないと話しているのを聞いて、まめは慌てて海から上がり、
「竜巻がくるよ! 早く帰ろう!」
と険しい表情で言った。着がえを済ますと外はどしゃぶりになっていた。それをみて、
「これが、竜巻なの?」
と、まめは何度も聞いていた。これもいい思い出になるだろう。
海で過ごす二時間はあっという間だった。二人とも満足したようで、車にのるとすぐに、眠ってしまった。二人の寝顔をみていると、疲れも一瞬で吹き飛んでしまう。
「朝だよ! 起きて~」
また嵐のような一日が始まった。
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